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〜オカガニの放卵〜
  Vol.001
2004/08/01
 宮古にはいろんな人が住んでいるが、いろんな動物も住んでいる。近代化と自然との狭間でたくましく生きているから感心してしまう。
  最近、オカガニという陸に住むカニと出会った。宮古ではごく当たり前にいるカニなのだが、夏場のこの時期、特に満月が夜空に浮かぶ大潮の日には勇敢なカニに変身する。
 初めて聞いた人には何のことか見当もつかないと思うが、オカガニの姿を一度目にしたら泣けてしまう。
  満月が夜空を照らし満潮を迎える頃、普段は内陸で大人しく暮らしている母オカガニは、いっぱいの卵が詰まった大きなお腹を抱え、命をかけた大移動を始める。行き交う自動車にもひるまず、広大なサトウキビ畑にも負けず、断崖絶壁にもめげず、無心に波打ち際を目指すのだ。そんな母ガニが何千匹もトコトコとカニ歩きで道を歩いている。
  やっとの思いで浜に着いた母ガニたちは非常に神経質。慎重に辺りを窺い(うかがい)、人など外敵がいないのを確かめた上で波打つ浜に下りる。両手の大きなハサミを振りかざし、しっかり踏ん張ると波に合わせ一気に全身を震わせる。波と振動で卵から幼生が飛び出し、さらわれるように大海原に新しい命が旅立っていく。
  波打つ音以外、何も聞こえない静かな浜辺で、あっちでブルブル、こっちでブルブルとオカガニたちは命をかけて新しい生命を誕生させる。
  暗い浜辺でふと思った―生きるってこんな感じじゃない―当たり前だけど当たり前じゃない姿に僕の心がブルブル震えた。
  オカガニは体長六aほど。五月から十月ごろまでが産卵期。満月前後の日没後の満潮に放卵する。宮古では至る所にいるが、池間島が特に有名。
波に合わせてハサミを振りかざし放卵するオカガニ=池間島で
波に合わせてハサミを振りかざし放卵する
オカガニ=池間島
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