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〜成川井〜
  Vol.007
2004/11/16
 宮古に来て初めて訪れた井戸が成川井だ。こんもりと木々に包まれたくぼ地を降りると大きく口を開けた洞窟が現れる。洞穴に近い洞窟には湧水の泉が二つあり、一つは泉、もう一つは簡単なコンクリート造で仕切られていて水が汲めるようになっている。宮古にはたくさんの井戸が存在する。そのほとんどは水道の普及とともに役目を終えているが、島の命を支えてきた重要な水場への思いは厚く、神聖な場所として大切にされている。
木々に包まれひっそりと口を開く成川井。この奥に
湧水の泉がある=平良市西原の成川で

  筒状に地面に伸びた井戸もたくさんあるが、小さな洞窟に入り自ら湧水に触れることが出来る井戸が多い。急勾配の石段を降りて真っ暗な中に音もなく湧き出す泉と出会える井戸、人工的に囲われた石垣で出来た井戸、ロープ伝いに階段を降りて汲みに行く井戸、海の中にある井戸など、宮古には豊かな水際の風景が点在している。
  サトウキビ畑を抜ける細道の脇にひっそりと存在するだけに周りを隔絶した雰囲気を放つ成川井。ゆっくりと茂みを踏み分け、ゴツゴツとした岩肌を持つ洞窟に足を踏み入れると、時、空気、色合いさえもなくしてしまう。音もなく湧き出る泉と溶け合いながら聞こえない音に耳を澄ます。ザワザワ、もやもやした心が水を打つ瞬間に耳を傾ける。
  ある音楽家が一週間ほどこの井に滞在し、湧水を飲みながら音楽を奏で、曲を作ったという。小さなホールほどある洞窟で音の反響を楽しむ一方、無音で広がる湧水を感じながら大地のリズムに耳を傾けたのだろう。
  静かな出遭いをもたらす水際の風景は宮古のあちらこちらに潜んでいる。忘れ去られた井戸には忘れられない想いが広がる。素敵な風景との偶然の出逢いが楽しみになっている。

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