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〜旧十六日〜
  Vol.014
2005/03/01

墓前でご馳走を広げ先祖の正月を祝う親族ら=平良市の墓地公園で
お墓の前でピクニック?楽しそうにたくさんのお弁当を広げる姿を見て驚いたのが旧十六日(ジュウルクニツ)。旧暦の一月十六日に当たるこの日、宮古内の多くの墓前では同じような光景が見られ、特に墓地公園など墓が密集した場所では至る墓前でピクニックをしている。
旧十六日は後生の正月と呼ばれ、ご先祖たちの正月だという。県内でも他の地域は知らないが宮古の年中行事の中でもかなり力の入ったものの一つだ。官公庁は午後から閉庁し、学校も午後からは休校。街の店舗の多くも休んでしまうほど。午後からは親族一同が島内外から集まってご馳走を用意し、みんなで先祖の正月をお祝いするのだ。
これまでの人生の中で墓は彼岸などに出向き掃除をして手を合わす場所としか活用方法を知らなかった自分にとっては大きな衝撃。墓前で家族団らんするという発想は全く持ってなかったものだった。
よく見れば小さな家ほどありそうな墓には集うのに程よいデッキ部分がある。そこに広げた先祖へのご馳走とそれを囲む親族。酒を酌み交わし姿なき先祖とともに正月を祝うという光景が普通に存在している。
墓地公園ではあっちこっちで祝宴が催されている。おじいちゃん、おばあちゃんから孫までがみんなでお重をつつき合いながらおしゃべりしている。―これまで持ち合わせていた墓・先祖の概念は何だったのだろう。その場にプッカリと浮かび上がる自分の存在が可笑しく思えた。
墓前で先祖からお年寄り、孫までが一座にして祝う。実にシンプルで分かりやすい次代継承の光景。一見、アンバランスなピクニックのように思える光景は大切な温かい気持ちを思い起こさせる。自分の周囲では残念ながら消滅したと思われるこの習慣。スタイルよりも宮古の人たちと同じように「気持ちを持って集まる」という大切な概念を手放してしまったように思えた。
 
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