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〜黒糖工場〜
  Vol.033
2006/03/01
 宮古島の冬、年末年始から三月後半まで、一年半かけて大切に育てたサトウキビの収穫作業は真っ盛り。週末には家族総出で鎌を持ってキビを刈る姿があちらこちらで見られる。宮古島は今、一年で一番忙しい時期を迎えている。
サトウキビが圧搾機にかけられジュースを取る様子を見る見学者ら=下地の黒糖工場で

 宮古本島には二つの大きな製糖工場がある。多良間島や伊良部島にも一つずつあり、計四工場が昼夜関係なく砂糖を作り続けている。車で走っていると大きな煙突から白い煙がモクモクと上がり、周囲は香ばしくも甘い香りが立ち込める。
 わんさか運び込まれるサトウキビ。工場の中ではサトウキビを搾り、甘い汁を煮詰めてどんどん砂糖が作りだされる。精白されていない出来立ての砂糖は薄い茶色をした大きめの粒。食べてみると猛烈な甘さが口の中に広がる。甘いだけで何となくニコッとしてしまうから不思議だ。
 宮古には小さな工場もある。いくつほどあるのか分からないが、集落の中にポツンとあってモクモクと立ち込める湯気の中で飴のような黒糖が次々と出来上がってくる。市販のものとは違い、ほろ苦かったり、しっとりしていたりと個性溢れる味がギュッと心をわしづかみにする。
 小さな圧搾機にサトウキビを差し込むと音を立てながら見るみるうちにキビジュースが流れ出てくる。コップに取って飲んでみると、サトウキビそのままの味が広がる。ボイラーでカッカと炊きつけられた大きな鍋にジュースが入ると何人もの人たちが鍋をかき混ぜる。
 風向きによって翻弄される視界。真っ白な中で甘い香りに包まれる。焚き上がる炎、かき混ぜる音が白い中で響く。湿った暑さの中に含まれる甘さは肌でも敏感に感じ取ってしまう。
 見るからに濃厚なこげ茶色をした黒糖が紙を敷いた机の上に広げられる。おばあさんが小さな断片に割りわけ、大小さまざまな黒糖が出来上がる。まだ温かい黒糖を口に入れるとしとっとした歯ざわりとともにおいしさが広がる。煮詰められたほろ苦い甘さは高級チョコレートにも負けない。紙袋にガサガサと入れて「はい」と手渡されたとき、ニッコリと笑っている自分がかわいらしく思えた。
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