宮古島ドットコムの連載企画
「宮古島はちゃめちゃ移住計画」



vol.006 3月27日 「ヤシガニ博士」


やっとの思いで会長の家についた。5分くらいの短い時間だったけれど、私たちにとってはすごく長い時間に思えた。

あれ?会長の車がない。居ない!どうしよう。どうしよう。

「そうだ!隣のこうちゃんに聞いてみよう。」こうちゃんの本名はまだわからないけれど自己紹介で自分のことを

「こうちゃんです。」と言っていたから自然と「こうちゃん」と呼ぶようになった。

私たちはすぐに車の向きを変えてこうちゃんの家に向かった。

ガサ!後ろで何かが落ちた音がした。

「お母さん!止まれ!水タンクが落ちた。」「後で私が拾いに来るからお父さんはとりあえず、こうちゃんに聞いてきて!」

「いいから戻れ。」「水タンクなんかいいよ!早くこうちゃんの家に行こうよ。」「いいから戻れ!」「わかった。」

戻ってみると、なんと一番大きな宿無しのヤドカリが落ちていた。

「しまった。落ちてる。捕まえろ。」逃げ足が速くなかなか捕まえることが出来ない。

「早く。早く。ぎゃー。お父さん、気をつけて。」

やっとの事で大きな宿無しのヤドカリを捕まえてこうちゃんの家に向かった。

「こんばんわ。こんばんわ!夜分すいません。松井です。アッ!こうちゃん。ちょっと見てもらいたいのだけど。ヤドカリみたいなのを五匹捕まえたんだけど何だと思う?」

玄関先でこうちゃんが言った。「ヤドカリでしょう?大きいから驚いたんじゃないの?」

「でも、宿がないんだけど・・・。」

「宿がない?じゃあ、ヤシガニかなぁ?ヤシガニはそんなに居ないよー。」

「とにかく見て!」私は早くこの怪獣の正体を知りたくてそわそわ、どきどきしていた。


青い青い空、青い青い海

「うん。」こうちゃんはサンダルを履きなおして出てきてくれた。

「アッ、ヤシガニだ。すごいじゃん。これ、ヤシガニだよ。どうしたの?」

「ドライブしていたらいっぱい、いた。」

「うっそー。」

「本当、本当。」

「うまいよー。これ。酢味噌をつけて食べると珍味だよ。茹でればいいんだから食べてみな。」すかさず私は返事をした。

「ううん、こうちゃんにあげるから一匹だけ私たちに頂戴。」夫が小さな声で私をつついて言った。「おまえ、ずるいぞ。」

「じゃあ、今から茹でて家の庭で飲みながら食べよう。茹でておくよ。」

「うれしい。有難うね。後で来るからお願いします。」松キヨはうれしそうに言った。

こうちゃんは続けた。「こんな大きなヤシガニしばらくぶりに見たよ。」

何だかうれしくなった。家に帰ったとたん、松キヨは大きなアイスボックスを軽トラに載せた。

「行くぞ。まだまだいるかも知れん。」「うっそー?また行くの?」「行くぞ。茹でるまで時間がかかるから。」

「そうだね。じゃあ、行くか。」二人はまた、来た道を走った。今度は松キヨが運転席に居た。

その後どうなったか・・・。

30分位走って九匹も捕ってしまった。

帰るとこうちゃんがヤシガニを茹でて、パパイヤの炒め物をして、ビールを用意して待っていてくれた。

「男の料理だよ。」「パパイヤは炒めてもうまいんだよ。」こうちゃんが作ってくれたらしい。

「また、捕ってきたよ。」「何処にいたの?本当に今日はすごいな。」そう言われ、ニカニカしながら私は一人で自宅に戻ってきた。

汗を流すためシャワーを浴び、ゆっくりしていると電話が鳴った。

こうちゃんが電話口で言った。「待ってるよー。早くおいでよ。」「はい。今、行きまーす。」

サトウキビ畑事件の「お日様の匂いがするいい男、けいちゃん」も、すでに座って三人で酒盛りを始めていた。

こうちゃんの家はこの辺には珍しく大きな芝生のお庭がある。その芝生の上にゴザを引いてテーブルが出してある。

すでに茹で上がったヤシガニと酢味噌が私を待っていた。

「うまい。」「うまいだろー。」「うん。うまい。」「な、うまいだろ。」「本当にうまい。」「な、本当にうまいだろ。」

先に食べていた松キヨは私が「うまい!」と言う度にしつこく同じことを繰り返した。

本当においしい。生まれて初めてこんなにおいしいカニを食べた。すごくおいしい。

「ねえ、これって料理屋で食べるといくらぐらいなの?」何かいやらしい感じがしたが聞いてみた。

「この、一番大きいのは2キロ弱だから、万だな。この小さいのだって時価だな。高いよ。マンゴも高いけどマンゴは作れる。だけど、これは取れる季節が決まってるし、作れるものじゃあないから高級だよ。」

けいちゃんはヤシガニ博士と呼ばれているほどヤシガニに詳しいらしい。おいしい食べ方を教えてくれた。

そして、私たちが食べやすいようにカニの殻を取ってくれた。

ヤシガニは大きくなるのに何年もかかるから大切にしなければならないということや、小さいものは捕ってはいけないこと。

こんなにおいしいものはない、と言いながらせっせと殻をむいてくれる。

「ふーん。そうなんだ。お母さん、明日も捕りに行こう。」「いいよ。毎日行く。」魚介類の苦手な私を呻らせた一品。


ウェルカム松井夫妻:by野村のやっちゃん

ヤシガニ。

すでに十二時を過ぎている。私が家に戻ってからも、こうちゃんと松キヨ、けいちゃんは「初物ヤシガニ」の祝宴を挙げている。

今夜も有意義な一夜であった。

7月が過ぎようとしていた。

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