宮古島ドットコムの連載企画
「宮古島はちゃめちゃ移住計画」



vol.012 5月8日
「変なカップル」


或る時、私は彼に聞いた。

「宮古島ドットコムのハチャメチャ移住計画にあなたたちの事を書いてもいいかしら?」

すると「いいですよ。でも、名前を出さないで下さい。誰だかすぐにわかっちゃうから・・・。」

と、言うことで「仮名:田中さん」達の事を書いてみようと思う。

世の中には本当にいろんなカップルがいると思うけれど、まさか宮古島でこんな二人に出会うとは思わなかった。泣き笑いのカップルが宮古島に来てから約一年間で挫折して東京に帰っていったおはなし・・・・。

まさに、「島の生活はそんなに甘くない」を痛感して帰っていったことだろう。


島尻車えび養殖場でえび採り

ある日のこと。

「おはようございます。おはようございます。」「はーい。」「田中といいます。」と、突然だらだらダラダラ話をし始めた。初めて訪ねてきたのにいったいどんな話をしているのだろうかと洗濯物を干しながらテラスから覗き込んだ。やがて2時間過ぎていき、お昼になった。「じゃあ、ありがとうございました。また来ます。」彼が帰った後「お父さん、あの人は誰?長い話だったね。」「うん。田中さんだって。インギャー方面のアパートに住んでいて家を建てるための土地を探しているんだってさ。いい情報があったら教えて欲しいって言っていたから、俺たちも探しているよって答えたよ。自分たちが当たっている物件や土地はここだよとか、交渉している土地の話とか、いろいろ教えてあげたからヒントになると思うよ。」「そう、良かったね。あの人達もいいところが見つかるといいね。若いの?」

「奥さんが23歳でご主人が45歳だって。いいなあ。」「何を言っているの?馬鹿じゃないの!若い奥さんはそれなりに操縦が大変だと思うよ。」「それもそうだ!」

そんな風に彼らと出会ったのだ。それから・・・大変な騒動に引き込まれていった。

働いていない彼らは我が家に何度もやってくるようになった。ところが奥さんは我が家にいる間中、うつむいていて声さえ発しない。何かを言ってもうなずくか、下を向いたまま

くすくすと笑う。後は終始、髪をいじっている。だんだん気持ち悪い人だと感じてきたが

若い人なので恥ずかしがりやかな?とも、思うようにしていた。

口が利けない訳ではない。小さな声で何かを言うのだが聞こえない。ただ、いつも着ている服が汚い。洗濯をしているのだろうか?と気になるほどだった。それでも、同じナイチャー同士、うまくやっていきたいと思って我慢して自分の娘と話すくらいと気持ちで接していた。何度か我が家に二人で来るようになりお茶を飲んだりお菓子を食べたり、長い時間をすごした。ある日、ドライブの帰り道、「田中さんの家に行かないか?」「うん、暑いから冷たいものでもご馳走になろう。」「そうだな、いつも来てもらってばかりだから一度くらい行かないと悪いものな。」「うん。」初めての訪問だった。電話をして確認する。「今から行きますが何号室ですか?」4階の景色のいい場所だった。階段の踊り場で呼吸を整えながら二人は4階までたどり着いた。暑さと疲れで早く冷房のきいた部屋の中に入れて欲しかった。「ピンポーン」「はい」田中さんがドアを閉めて外に出てきた。(あれ?中に入れてくれないの?)私たちは外で30分位話して帰ってきた。「何?何で中に入れてくれないの?奥さんは何で出てこないのよ。」「そうだよな。失礼だよなあ!。」「もう、絶対に来ない。」変な人達だとは思っていたがやっぱり変な人達だった。しばらくして田中さんがやってきた。一人だった。「あいつ、家出したんです。」「えー?いつから?」「松井さんたちが来た時にはもう、居なかったんです。」「そうなの。」気の毒になった。「毎回なんです。すぐに家出しちゃうんです。家のことは何もしないし、すごくやきもち焼きで近所の奥さんと話をして帰ってきたら家出しちゃったんです。しかも全財産をもって。ぼく、お金が今無くて困っているんです。」「じゃあ、ご飯、食べていけばいいよ。」何度も何度も家出を繰る返しているらしい。奥さんだと思っていたら実は内縁の妻だった。

テレビで宮古島の取材を見て「10万円で暮らせる島」「来間島に住みついたナイチャー」を見て軽乗用車一台で宮古島にやってきたという。「10万円なら何とか食っていけると思ったんです。」私たちは口をそろえて言った。「甘い。」「あっ、でも、マンションを売ってきたし実家の土地も売ってきたので5億円位は持っているんですよ。」と田中さんは言った。


池間島発ライブ

夫は「だから、あんなに若い嫁さんが来たんだな。」「いいえ、彼女は僕がお金を持っていることは知らなかったと思います。こちらに来てから話して、彼女の通帳にも5千万円ほど入れてあげたんです。」「田中さん、そんなことをするからすぐに出て行っちゃうんだよ。黙って居ればよかったのに。」「でも、彼女はそんな子ではありませんよ。」そう言いながら目に涙をいっぱいためて今にもこぼれてきそうだった。それから、何度も何度も彼と彼女は喧嘩しては家出を繰り返されていた。たぶん一月に2回位は家出して内地に帰ってしまっていた。お金のかかる子だなあと思ったけれど(金持ち)だから、いいのかな?といっていた。

ところが「松井さん、また、出て行っちゃいました。全財産を持って行かれたのでガソリンを入れることも電話をかけることも出来ません。通帳も印鑑もないのです。ご飯も食べれません。5千円貸してください。」大泣きをしながら入ってきた。「もう、勘弁して!」

心の中で叫んでいた。その位、この二人にはへきへきしていた。実はこの田中さん、私たちが家を建てようと計画していた交渉中の土地、全部に問い合わせして地主に会って「この土地を売って下さい。」と持ちかけていたのだ。地主は(松井さんよりもいい値段で買ってくれる)と思ったのだろう。私たちが交渉していた全ての土地が白紙にされてしまった。「田中の野郎!許せん!」そう言いながらも目の前でないている田中さんに15000円も貸してしまった。「ありがとうございます。」車とともに消えていった。翌日、また泣いて玄関に立っていた。私たちは彼を励まし来間島の港で合流して釣りをしていた。ルルル・・・

彼の携帯電話が鳴った。「どこに居るの?うん、うん、すぐに迎えに行くからね。そこを動かないでね。」泣き声であったがうれしそうな声で話している。私は小さな声でつぶやいていた。「馬鹿じゃないの?」「なあ。おれも、そう思うよ。」あきれてものが言えなかった。


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