ノブちゃんが作る陶器のシーサーはたまらなく愛嬌があり、やさしくって愛らしい。
一つ一つに愛情を込め、買って下さった人が少しでも幸せな思いになるように心を込めて作っている。
サーフィンに乗っているシーサー等、本当に可愛い。しかもみんなカッコイイ服まで着ている。
思わず「欲しい!」と思ってしまう。内地に住んでいる人なら絶対にお土産ではなく自分のために欲しくなる。宮古にいてシーサーは、山ほど見て知っていても欲しくなる。なんともいえない位、いい。波動がいい、エネルギーがいい、癒し・・・。呼吸が楽になるって言うのか、気持ちよくなるって言うのか、とにかくいい!
小さなアトリエの中にノブちゃんの優しい思いがいっぱいこもっているシーサーが並んでいる。
手作りだからお土産やのように所狭しと並んでいるわけではない。
素敵に、自分が一番輝ける場所に、一体、一体、並んでいる。
ノブちゃんが毎日話しかけているかのように思う。みんな優しい顔をしている。
シーサーと言えば家の守り神だと聞いているが、ここのシーサーは心の守り神のように思う。
そして、その横には小さなお地蔵さんも笑って並んでいる。これがまた、いい!登校拒否とか閉じこもりとか、心の病の人に是非、プレゼントしてあげて欲しい。そんなエネルギーが放出されている。
オリジナル万華鏡その2 |
最初にノブちゃんと会ったときには20代の女の子だと思った。その位、小さくて可愛い感じの人だった。実際は・・・・?才。「この子が作ったシーサーってきっと可愛いだろうな。」と確信した位だ。
お店の名前は「トートーシーサー」
夫は何度教えても、「シーシートーサー」と言う。
話の中で「シーシートーサーの奥さんがね・・・」とか、不意に言われても何のことだかわからないときがある。
ある朝のこと、「お母さん、シーシートーサーが来てるよ。」「はあー?シーシー?」
「何で判らないのだ!トーサーを作ってる小川さんだよ。」「トートーシーサーでしょ!トーサーじゃなくてシーサー!」わざと言っているのか、とぼけているのか、真面目に思い込んでいるのか、よく判らない説明を聞き玄関に出て行った。 彼女は一人でアトリエに入っていた。
ボーッ!という表現がいいのか、あっけ!と言うのがいいのか判らないけれど、とにかく一点を見つめていた。
「おはよう!」「あっ、おはようございます。体の調子が悪いって聞いたんですけどもう、大丈夫なんですか?」「うん。ありがとう、まだ、もうちょっとかな?」「気をつけてくださいね。」・・・・・・しばらく無言が続いた。
思い切ったように彼女は言った。「あの、このシーサー・・・・何処で買いましたか?」
「えっ?沖縄本島だけど・・・。」「幾らでしたか?¥1000位ですか?」瞬間、私はノブちゃんの目を見た。
可愛いノブちゃんが一瞬でシーサー作家になっていた。何が起きているのかわからなかった。
思わず「3っ¥1,000」「えっ?」後の会話はあまりよく覚えていないが、ノブちゃんが面白くないことだけは伝わってきた。
(そういえば、このシーサー、ノブちゃんの作っているシーサーに良く似てる・・・)
どうしたのだろう。無言の時間は短かったと思うけれど・・・沈黙・・・・
「前に石垣島の人がやってきて、私のシーサーを作らせて欲しい、って言ったんです。デザインを売って欲しいって。私は一つ一つ手作りで思いをこめて作っているのでデザインを売ることは出来ませんと断ったんです。同じものは作りたくないので大量生産はしたくないと。でも、同じものが沢山出回り始めて・・・・。電話してその人に確認したら1万個(千個だったか?)作ったと言われ・・・・すぐに回収するという約束だったのですが。弁護士に相談しているんだけど、まだ売っているんですね・・・。」力なく、そう言った。
私は、慌てた。どう、リアクションをしていいのか判らず、ピントはずれな励ましをしつづけた。
「でもさー、このシーサーの牙が怖いよね。ノブちゃんのは牙じゃなくて歯だもんね。こっちは牙が外からついてるじゃない。ここ、おかしいよねー!私は3つ買ったけど、誰にも上げてないから・・・。娘が二人居るから3人で分けようと思って3つ買ったんだよ。それにその店にはもう、無かったよ。これで売り切れみたいよ。」「石垣島だとばれると思ったんだね。本島ならばれないと思ったんだと思う。ショック!まだ、売ってるんだ・・・。もう、回収するって約束したのに。」「ひどいねー。」何て慰めていいのかわからなかった。
相変わらず私はピントはずれな慰めを言った。「裁判かけても疲れるだけだし、裁判に使った金額の回収も結構難しいよ。たとえば、ほら、あのステンドグラスだって、デザインは同じでもガラスの色が違えばさ、オリジナルになるんだってよ。シーサーもさ、まったく一緒じゃないでしょ?そうしたら裁判にしても勝つとは限らないよ。」
「弁護士さんに相談したら私のほうが有利だって言ってたけどね。」「うん。有利かも知れないけど難しいよ。」「私たちは実際に裁判をしていることがある。おかげさまで私たちの弁護士さんは超一流の弁護士さんだけど弁護士って言ったってピンからキリ!難しいと思う。」
オリジナル万華鏡その1 |
そんな言葉を並べてノブちゃんの気持ちを和らげようとした。でも、ノブちゃんのほうがずっと大人だった。「向こうも処分するとなると賭けたお金が損になるから仕方ないのかも知れないしね・・・。」力なく自分で自分を説得しているようだった。アッパレ!ノブちゃん。
さて、その後気持ちを切り替えたのか、ノブちゃんはアベンチュリンと水晶でブレスレットとイヤリングを作った。グリーンと透明の石で出来たブレスレットはとてもさわやかでノブちゃんにぴったりだった。
「ノブちゃん、お金はいいよ。その代わり、もうすぐ亜美ちゃんが来るから何かノブちゃんのシーサーをプレゼントしてくれない?」変な慰めだった。本当は「そのブレスレットとイヤリングは私からのプレゼントだよ。」と、言いたかったのに・・・。
「いいえ、代金は払わせてください。欲しいからつくりに来たんです。亜美ちゃんが来たときには私がちゃんとサービスさせていただきますから。」「ああ、そう?お金、もらっちゃっていいの?」「はい。」なんか変!こんなつもりじゃなくてプレゼントしたかったのに。でも、彼女のプライドを傷つけたくなかったからそれ以上、何も言えなかった。(ごめんね。ノブちゃん。私がシーサーを買ってきちゃったから・・・)
私は彼女が帰ってから夫に一部始終話した。「ノブちゃんのシーサーは特別に何か感じるからみんなが真似したくなるんだよね。でも、あの波動とエネルギーと感性はノブちゃんが神様から与えられたものだから真似できないよ。外は真似ても、手に取れば判るよね。店に並んでいてもノブちゃんのシーサーは買う人を選ぶって言うか、きっと相手が(これ、買わせて下さい)って、感じで買っていくようになっているよね。今度のことはとっても気の毒だけれど私たちの万華鏡だって登録商標してるわけじゃないから、いつかこういうことも起こるかもしれないね。」「そうだな。ノブちゃんもトーサー作家として注目されてきてるって事だな。」
「おとーさん、トーサーじゃなくって、シーサーだってば!シーサー作家!」
「あっはっはっは!そうだ。シーサー!わかったよ!」
亜美ちゃんとは・・・私の長女のこと。この娘については、また、ゆっくり書いてみようと思う。