宮古島ドットコムの連載企画
「宮古島はちゃめちゃ移住計画」



vol.038 11月13日
「あぷさら」の貝殻


たぶんこの文章が載るころには、娘と二人だけのヨーロッパ旅行を満喫している頃だと思う。


宮古島の自然/1

夫と離れて、初めて二人だけで海外に旅をする。早くて1ヶ月、長ければ2ヶ月の旅になる。

痩せて、衰えた娘が宮古空港に降り立ってから、早くも2ヶ月が過ぎていた。身長160p体重45s、しかも疲れ果てたその姿は病人そのものだった。考え方によってはたった2ヶ月で長期旅行に行けるようになったのは驚異的な回復だと思う。

今では体重も48kgに増え、天真爛漫に笑うその姿はとても愛らしく、自分の将来を見つめ直し、希望を語るその姿は親として嬉しく思えるものだ。

やっと昔のような娘の笑顔を見ることが出来た。これだけ早く元気を取り戻せたのは宮古島の自然や海の青さ、空気のおいしさ、ゆっくりと流れる時間、そして「あぷさら」のイサオさんとマリコさんのおかげだ!

こちらに来てから毎日のように自動車学校に通い、他の時間はゆっくりと散歩したりドライブを楽しんだり、昼寝をしたり、だらだら、だらだらと過ごしていた。

その中で唯一、亜美が訪れるお店があった。「あぷさら」だ!

昔は何を販売していたのか、詳しくは知らないけれど、人から聞いたところによると、健康によい物をお伝えする店だったらしい。

今は宮古島で取れた貝殻を使って壁掛けやオブジェ、ランプ等を作り、販売している。

当然、娘もこのご夫婦の大ファンになった。

店に入ると心地よい音楽が流れ、それは大きくもなく、小さくもなく、耳障りのいい音量に調整されていた。流木のオブジェがセンスよく並べてあり、奥から優しいマリコさんの声が聞こえる。

「いらっしゃ〜い」必ず出してくれる飲み物は、毎回違っていて喫茶店にでも座っているような感じがする。

月桃の実と葉で作ったお茶や有機栽培のコーヒー、石垣島のパインジュース、ミネラルいっぱいの飲み物。いつも精一杯の笑顔で迎えてくれる。イサオさんは、いつもニコニコしていて言葉数は少ないけれど、優しさがいっぱい伝わってくる。マリコさんは話の中にイサオさんが入っていないと感じると「ねっ、イサオさん」「そうだったわよね、イサオさん」と夫への配慮も忘れない。

壁に目をやると貝で作られたランプの壁飾りが掛けられている。

シャコ貝のランプの色はコバルトブルー「シャコ貝が海にいるときの色を演出してみたの。」と、優しく答えた。

普通、シャコ貝や貝殻を販売している所は、綺麗に漂白をしてニスを塗ったり、どうすれば貝殻を綺麗に見せられるかと、努力しているお店が多い。

でも、「あぷさら」の貝殻たちは、ほとんどが天然色だった。


宮古島の自然/2

 

「ねぇきれいでしょ!?天然の貝の色ってこんなに美しいのよ。歯ブラシでね、細かいところまでゴシゴシ洗うと、汚れも落ちて本来の貝の色がこんなに出てくるのよ!ここまでするのは大変な時間がかかるんだけどね。」

私はその貝殻の美しさに驚いた。シャコ貝を拾ってくると何も考えずに漂白剤の中にドボン!と付けて真っ白に漂白していた。そして、それがもっとも美しい色だと勘違いしていたのだ。前にも書いたように、どこのお土産屋でもそのようにして売っていたからだ。

白くて綺麗な貝がら・・・。それが私のシャコ貝のイメージだった。

ところが、マリコさんのお店に飾られているシャコ貝は、紫色、オレンジ、黄色、グリーンがかったもの、珊瑚が張り付いているもの、本当に自然の貝の色が百パーセントいかされていた。

その貝を見て「優しい色でしょ?本当に自然の貝の色って癒されるわよね」と言いながらその貝を手に持って撫でていた。

 私は恥ずかしかった。

内地から来る友人たちに「お土産だよ。」と言って持たせたシャコ貝の貝殻は、すべて真っ白に漂白した安っぽい貝殻だった。

 

そんな貝殻をふんだんに使ってイサオさんとマリコさんは大きな作品を作っている。

「マリコさん、お客さんは来るの?」「ううん。まだ始めたばかりだから値段も付けてないし、宣伝もしてないのよ。イサオさんに「値段を付けて!」って頼んであるんだけどなかなか付けてくれないの。私はね、この子達が可愛くて値段なんか付けられないのよ。でも11月からお店の宣伝をしようと思っているのよ。だから早く値段を付けなくちゃいけないの。」と言った。

確かに…。   私も値段なんて付けられそうにない。

そこにあるシャコ貝は全て違う顔を持っていて、個性派ぞろい。本当にいい顔をしている。イサオさんもきっと値段なんて付けられないと思う。そのくらいやさしいご夫婦なのだ!

娘が彼女たちにひかれるのも不思議ではない。

宮古島が竜宮城なら、彼ら二人は竜宮の守り神というところだろう。

並べられた竜宮の贈り物と宮古島の潮の香りが店いっぱいに広がっている。

「観光客の人達がここに来たら、感動して涙を流す人もいるだろうね。」私は言った。

「うん、そうだといいね。」マリコさんは優しく微笑んだ。

 

娘は自動車学校の空き時間になると、好んで彼らに会いに行った。

試験合格発表の翌日、亜美は「イサオさん、マリコさん、おかげさまで合格しました」と報告に行った。

すると彼らはどういうわけか、お互いの肩を抱き合い「よかったわね、イサオさん」と自分たちのことのように喜んでいた。

娘は笑いながらこう言った。

「よかったわね、あみちゃん」じゃないのぉぉ〜???(笑)。

 

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